私にとって25回目となる令和6年度の酒造りが始まりました。
25年といえば、四半世紀の歳月です。なんとか私も酒造りと銀婚式を迎えることができました。
長かったような、あっという間のような・・・酒造りの場合、何年、何十年の経験があろうが、毎回、新しい発見、課題が見つかり、向き合うほど深淵にはまり込むような感覚があります。同時に、田村酒造場200年の時を超えて、受け継がれる蔵人のバトンを、次の走者に無事に渡さねばという思いを抱いて、身が引き締まる今日この頃です。

さて、酒造りの近況ですが、今期は、コロナ明けの増産に追われた前期と比較して、蔵人たちも、もともとの造りのテンポを取り戻し、じっくりと酒造りに向き合うことができそうです。
今年入社した蔵人も、周りのサポートを受けながら、頑張っており、私も期待しています。

悩みの種は、ここ数年来続く猛暑です。
耳にする40度近い気温にも、慣れてしまいました。いずれ、麹室のほうが涼しく感じられる時代になるかもしれません。醸造中の酒自体は、基本的に機械で温度管理がされているものの、例えば蒸米の放冷など従来のイメージとは大きくずれてきています。
今までは、本格的な酒造りの9月になったら、残暑のきつい日があったとしても、最高気温が30度を超えることはほとんどなくなり、朝晩は涼しくなりました。それが、今年は半ばでも猛暑日が続く異常事態。いや、これが普通になっていき、9月は「夏」ということになるのかもしれません。
データを細かくとって、その数字に対応していても、酒米の溶け具合の想定がずれることが出てきています。しかし、ここ数年のデータを見直し、酒造りの基本を考え合わせて造れば、きっと良い酒が出来ると確信しています。

今期の酒造りの目標も、変わることなく「より旨く。」
全銘柄の酒質向上を目指しますので、皆様に楽しく飲んでいただければと嬉しいです。

嘉泉の新酒を楽しみにお待ちください。

                        杜氏 高橋