「令和5年度の酒造りに向けて」
令和5年度の酒造りが始まりました。
今期は製造量が大幅に増えて、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。
この3年間は外食やイベント、宴会ニーズが激減したため、ほとんどの酒造蔵が減産いたしました。当蔵も品目数を維持しながらの多品種少量製造となり、後調整が効きにくくなるという難しい酒造りを続けていました。
今期はひとまず、本来の造りとなり、経験が一段と発揮できるとあって一安心しています。
さて、今期から大幅に増産する酒造蔵がほとんどだと思います。
減産時期に極端に需要が落ちた酒米が増産に耐えるのか心配していましたが、大きな問題はなさそうです。コロナ禍の間も飯米に切り替えるなど田を休めることなく、しのいでくださった農家の方々に、心から感謝しています。
それよりも、米に影響を及ぼしたのは気象庁が「観測史上、最も暑い夏だった」と発表した異常な暑さです。お彼岸を超えても30度以上の日々が連発するなど、いよいよ異常気象といってよいでしょう。稲の高温障害で収量が大きく落ちないよう、また、稲刈りまで自然災害などなく無事でありますよう、祈るような思いです。
また、40度近い気温も珍しくなくなった東京での酒造り。本来ならば日本の気候風土にあわせて、最適な酒造環境となっているはずの酒造蔵が、今年はなんとも暑いのです。本来なら夏でも蔵内は少しひんやりしています。しかし、今年は放冷作業もはかどらず、タンクの温度管理も一筋縄ではいきません。この温暖化が続くようなら、従来通りのやり方では通用しなくなるかもしれません。このように、四半世紀近く酒造りに携わっていますが、毎年の悩みの種は尽きることはありません。
今期の酒造りの目標は変わることなく「より旨く。全銘柄の酒質向上を目指す」。
生産量と出荷量が増えるとあって、田村酒造場は製造・営業ともに活気がみなぎっております。造った酒をより多くの皆様に楽しんでいただけると考えるだけで、明るく前向きな気持ちになります。
今年も嘉泉の酒造りに一層のご期待をください。
杜氏 高橋